東電の監査意見を批判:株主オンブズマンメンバー

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株主の立場から主張する株主オンブスマンからすれば、東電の計算書類に適正意見を付した新日本監査法人は、格好の標的のようだ。

賠償ゼロ計上「資産超過」東電決算、監査法人「適正」意見の背景 - 法と経済のジャーナル Asahi Judiciary - WEBマガジン - 朝日新聞社(Astand)

株主オンブズマンのメンバーの一人、松山治幸・公認会計士は5月28日、「誤った判断だ」と新日本の対応を批判する書面を日本公認会計士協会に送った。

 発生した事故による賠償額は合理的に見積もり、必要と判断される額を損失として計上するのが原則です。しかし、本件では合理的に見積もることが出来ないため計上されておりません。これは重要な未確定事項に該当します。重要な未確定事項が存在する場合には、監査意見の表明は不可能になります。意見不表明、意見差控に該当します。

 松山氏は取材に対し、「事故は3月に発生しているのだから、3月末の時点で、放射能漏れで被害が出ていることは分かっていた」と指摘。「東電がなにがしかの負担をしなければならないことは3月末にはだれの目にも明らかになっていたのだから、ゼロではなく、それ相応の金額を計上すべきだった」と述べた。また、「実際の東電の財務内容はだれにも分からない状況なのだから、監査法人も『分からん』と言えばいいのに、『適正』と言うとは、思い切ったことをやるものだなと思う」と話している。

たしかに、東電の財務内容はだれも分からない。しかし、貸借対照表や損益計算書だけに意見を述べているわけではない。

実際、東電の決算の「財務諸表に関する注記事項」「継続企業の前提に関する注記」とほぼ同じ内容が記載されており、その監査報告書には「追記情報」として同様の内容を記載し、注意を喚起している。

適正意見とは、決して全てが正しいと言っているわけではなく、全体として会計基準に合致していることを確認しているに過ぎない。開示を利用する側はそれを理解しなければならないし、いまだ期待GAPの一つでもある。

 

日本の監査基準においては、「監査人は、将来の帰結が予測し得ない事象又は状況について、財務諸表に与える当該事象又は状況の影響が複合的かつ多岐にわたる場合には、重要な監査手続を実施できなかった場合に準じて意見の表明ができるか否かを慎重に判断しなければならない。」とされている。

今回のケースは、賠償損失の見積もり要件を満たさなかったにすぎず、影響が複合的かつ多岐にわたるというものでもないのだろうと推定される。

会計における引当金計上は、以下の4要件を必要である。(企業会計原則注解18

  • 将来の特定の費用または損失であること
  • 発生が当期以前の事象に起因すること
  • 高い発生可能性があること
  • 金額が合理的に見積り可能であること

 

株主オンブスマンの立場からすれば、適正であるという結論を求めるべきであり、意見を差し控えるべきという主張が個人的には理解できない。

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