企業財務会計士の創設に明確な反対姿勢:日本公認会計士協会

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2月16日に日本公認会計士協会の本部において臨時理事会が開催され、今般の公認会計士法の改正に対する協会の基本的スタンス、懸念事項、要求事項が審議され、以下のような趣旨の懸念事項が考えられている。

    • ほとんどの受験生は監査を担う「公認会計士」を目標に受験しているのであり、「企業財務会計士」を目指しているわけではない。受験生が目指さないと思われる資格を作ることの意味はあるのか。
    • 公認会計士とは業務範囲が異なる別の資格に「会計士」という資格名称を共通して用いることは、誤認に基づく混乱の発生を懸念する。これは受験者のみならず社会全般に混乱を与える恐れがある。
    • 新たな資格制度の創設は、企業においても公認会計士試験合格者を含む会計分野の有為な人材を求めるという企業側の要望を反映したものと理解しており、企業側が新たな資格を必要であるかどうかは企業側の問題であって、協会側が賛同して新たな資格創設を推し進めるものではない。
    • 企業のみならず、地方公共団体等の公的分野でも公認会計士試験合格者を含む会計分野の有為な人材の確保・育成が必要である。
    • 企業財務会計士の創設は反対であるが、仮に新たな資格として制度化された場合であっても一系統の公認会計士資格の中間段階の資格として位置づけられているのであれば、協会への入会の形態はどのようなものであろうとも公認会計士と同等の正会員ではなく、準会員とすべきである。
    • 平成15年の試験・資格制度改革の効果が検証されないまま現在にいたっている。まずこの検証が必要ではないか。
    • 来年度には税理士法改正も想定されているが、今回の公認会計士法改正が税理士法改正における公認会計士の税理士資格の制限の議論につながることも懸念されることから、絶対にそのようなことの内容断固たる対応を望む。
    • 第10回懇談会配布資料3「平成23年以降の合格者数のあり方について」の1,500人から2,000人程度を目安とすることの現実的な運用については、合格者の数を1,500人程度にすることを強く求める。

(Source:「論説:新たな資格、企業財務会計士の誕生か?今国会上程予定の公認会計士法の改正案に思う」、日本公認会計士協会東京会『東京C.P.A.ニュース』No.648 2011.3)

「公認会計士制度に関する懇談会」中間報告書の問題意識は以下のようなものであった。

    1. 合格者という有為な人材が活用されないという意味での社会的損失が生じているのではないか。
    2. 経済社会の幅広い分野で活躍する監査と会計の専門家を確保していくという制度の狙いを実現できていないのではないか。
    3. 試験・資格制度の魅力が低下するのではないか。

 企業財務会計士の創設自体の賛否は色々あるだろうが、これらの問題意識は解決されるべきだろう。

 会計士という生き物は、発生可能性から物事を考えるが、それはいつもマイナスのリスクばかりをとらえ、混乱を誘発する。そのくせ、改善策は出さないことが多い。それでいいのか。

 

上記で提示された懸念事項について、検討してみる。

  • ほとんどの受験生は「企業財務会計士」を目指しているわけではない。
    ⇒それは、当然だろう。今の受験生がいまだ創設されていない資格を目指しているわけがない。
    しかし、「企業内会計士」という言葉も企業の管理部門で知られ、やっとのことで一部の大学生にも知られるようになった。企業にとって有用であり取得を推奨するに値すると評価されることで、資格を目指すものが現れる。決して、懸念事項とされるものではない。
  • 「会計士」という資格名称を共通して用いることは、誤認に基づく混乱の発生する。
    ⇒確かに、そのようなこともあるかもしれない。
    しかし、会計士補がなくなり、公認会計士試験合格者と名刺に記載するようになった時も一時混乱したが、1年もすれば理解がいきわたった。常識ある社会人はすぐに新聞等で違いに気づくだろう。社会全般に混乱などとは大げさで、自分たちと一緒にされたくないという欺瞞にすぎない。
  • 企業側の問題であって、協会側が賛同して新たな資格創設を推し進めるものではない。
    ⇒その通りなのだろう。全く問題意識を持っていないと言いたいのだろう。
  • 公的分野でも会計分野の有為な人材の確保・育成が必要。
    ⇒その通りなのだろう。あまりに唐突で言うことがない。
  • 企業財務会計士の創設は反対である、一系統の公認会計士資格の中間段階の資格として位置づけられている、準会員とすべきである。
    ⇒自分たちを差別化し、企業財務会計士というのは下位資格であるということを明確にしたいという牽制が働いている。
  • 平成15年の試験・資格制度改革の効果が検証されていない。
    ⇒経済界等への就職は進んでおらず、理念は達成されていない。合格者を増やしすぎ試験制度の運用に失敗した。ある程度の検証は既に済んでいて、その反省を少しだけ反映しようとしているのではないのか。
  • 公認会計士の税理士資格の制限の議論につながることも懸念。
    ⇒唐突過ぎて、議論からは的外れ。
  • 合格者の数を1,500人程度にすることを強く求める。
    ⇒国家試験の運用は、需給を見定めながらも急激な増減を繰り返すのではなく、コンスタントに合格者を出すこと。

 

最初から完璧な制度などあり得ない、だからこそ運用で改善していく、PDCAサイクルとはそういうものだ。「企業財務会計士」創設、それはそれで突き進めばいい。今回の懇談会での問題意識を共有し、少しだけ改善する策としてほしい。「未就職者に厳しく、社会人に優しい」、このコンセプトでよい。

  • 未就職のまま勉強を続けて就業機会を失うことがないように、未就職者の受験回数を制限するべき
  • 試験期間が長期化することによる社会的損失を回避するためにも、未就職者の受験回数を制限するべき
  • 経理実務を担う人材が自己研鑚の評価指標として利用できるように、社会人の科目合格は繰越年数を拡大すべき

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