隣接資格への税理士資格付与の争い

| コメント(0)

弁護士及び公認会計士は、税理士と部分的に重なる領域を専門としており、それぞれの分野におけるプロフェッショナルとして活躍している。高度専門職である弁護士及び公認会計士の資格を有することが、重ならない領域に対する知識の検証をせずとも、知識習得を自己研鑚に委ねても問題ないであろう能力が備わっているという前提が置かれている。

しかし、昨今の司法試験制度改革、公認会計士試験改革による各資格保有者の増加は、各専門業界での競争を生み、そこではじき出された人が無条件取得可能な隣接資格に逃げ込み、税理士業界での競争が激化することへの警戒感を増大させている。

現実問題として顕在化しているということではないが、実際に各業界での競争に負けた者が税理士業界へ参入し、税理士としての自己研鑚をも怠っていた場合には、税理士業界の信頼低下を招いてしまうのである。

 このような問題意識が大きくなり、日税連からは税法科目の合格を条件とすることの意見が出されている。

当然、公認会計士協会は、公認会計士試験では当然に税務業務を担い手として租税法が試験科目とされており、第2次シュワプ勧告や税理士法の立法趣旨に勘案して理論的な決着はついていて、国民のニーズは公認会計士としてのバックグラウンド活かした税務サービスを求めているとして、反対している。

しかし、それは現実を見ているのだろうか。公認会計士試験も新制度で合格した者、とくにゆとり試験合格者といわれる2007年合格者の修了考査が先日実施され、まもなくその中からも公認会計士が誕生することとなる。

監査業界に属する者としては、つくづく税効果のための税金しかわかってないなぁと思うことが多い。自分たちが監査業務をするなかで、気付いたことを指摘することはあっても、最後に「税理士に確認してください」という言葉は忘れないようにしていることが、責任転嫁でもあり、常々知識不足を自覚している証なのだろうと思う。

 

このような監査の経験のみで、税務経験のない人がいきなり税理士を名乗れることに、一抹の不安を覚える。確かに、自己研鑚により税金の知識を習得し、税務の経験を重ねることで、適切なサービスを提供する自身も持っていることも事実だ。しかし、その能力検証のための過程を設定されたとしても、良いと思う。

そこで求められる検証過程というのは、やはり税務実務の経験なのだろうと思う。日税連が主張する税務科目の試験でもないし、公認会計士協会の主張する修了考査とCPEでもないと思う。

 

利害関係団体が、自己の団体の利害を主張することは大事であり、そのこと自体は間違っていない。しかし、利害関係は適切に調整されなければならない。それは行政の仕事であるべきだが、そこにもまた省壁があり、つまらない言い争いが永遠と決着しないのである。

  

(参考)

 「税理士法改正に関する意見(案)」(平成22年5月31日) (日本税理士会連合会:日税連会員限定)

【改正の方向性】

  • 弁護士・公認会計士(以下「隣接職種」という。)に対しては、能力担保措置として、弁護士は会計学に属する科目に、公認会計士は税法に属する科目に合格することを原則とする。

【理由】

○ 隣接職種の資格者等に対する能力担保措置

公認会計士は、公認会計士法第1条で、「公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。」としており、各々重要な使命を持った職業専門家であり、その専門性は異なっている。

他士業制度の改変により急激に増員された他資格者が、無条件で税理士資格を付与され、税理士業務に参画することは問題である。

○ 公認会計士
会計に関する専門家として、会計学に属する科目は免除する。
公認会計士試験において必修科目である「租税法」の試験は、監査証明業務を行うために必要な租税に関する法律関係等についての一般的な理解力の検証を目的として出題されており、税務に関する専門家としての十分な資質検証がなされているとはいえない。したがって、税理士になる公認会計士については、税法に属する科目のうち税理士試験において必須科目である所得税法又は法人税法のいずれか1科目の合格が必要である。 

 

日本税理士会連合会「税理士法改正に関する意見(案)」に対する意見 (公認会計士協会)

1.税務業務の位置づけと公認会計士がその担い手であることへの相当性

 公認会計士は、財務書類の監査証明業務を中核業務とする会計・監査の専門家である。税務業務は、会計領域と法的領域の接点にある実務であり、また、税務会計は会計領域の重要な一部である。したがって、公認会計士は当然に税務業務の担い手であると認識され、それ故に、公認会計士試験においては従来から租税に関する科目の受験が必須とされている。

2.税理士法制定時の趣旨に基づき公認会計士が税務の専門家であることの適格性

 昭和26年の税理士法制定に先立って発表された第2次シャウプ勧告では、「弁護士及び公認会計士は、現在及び将来を通じて、人物試験以外の試験を受けることなく、税務当局に対して納税者の代理をなすことを、認められるのであろう。彼らの専門的資格は、それぞれの専門的地位を得たことによって、一般的に証明済みであるから、更に資格試験をすることは必要でない。税の部面における特殊の経験はないかもしれないが、その専門的地位にあることによって、彼等は、納税者の有能な代理者として必要な知識を持つことになるであろうということが予想される。」と明示されている。これを受け、税理士法制定の際の立法者の趣旨説明においても、「税理士となる資格を有する者としては、まず弁護士、公認会計士が適当であると考えられ、これに加えて税理士試験に合格した者 ... 」として、税理士試験合格者に先行して、公認会計士及び弁護士に税務における専門家としての適格性を認め、以来、その趣旨に則した制度運営がなされている。

3.公認会計士が税務サービスを提供可能な専門家であるとの資質の確認とその資質向上のための継続的な研修の実施

 税理士試験を合格した税理士は、合格した税法科目についてのみ税務サービスの提供が許されているわけではなく、すべての税務サービスを提供することができる。これは、専門家としての資質が一定水準以上であることが試験により確認され、その後の研修や実務を積むことによって国民の期待する税務サービスの提供が可能であると考えられているからである。
  公認会計士及び弁護士は、同様な意味において専門家としての資質について制度的に確認済みである。

4.隣接職種の資格者に対する能力担保措置を講ずる必然性

5.公認会計士が税務サービスをて供することによる国民のニーズへの対応

 国民望む税務サービスの内容は、多種多様であり、  その内容にしたがい適切な報酬のもとで幅広く提供されることが望まれ、税務サービスが現在よりも制限されるのであれば、国民の利便性は低下する。
 公認会計士及び弁護士は、それぞれの専門分野を生かして多種多様な税務サービスを提供することが可能であり、彼らのバックグラウンドを活かした税務サービスは、国民のニーズにこたえるものである。したがって、両者の税務サービスの提供に制限を課すことは国民の視点に立つものではない。

コメントする

OpenID等によりサインインすることによりコメントが即時承認されます。