監査法人の採用人数は、今後どうなる?

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 公認会計士試験合格者の大半が志望する監査法人の採用人数が激減している。 

2006年 2007年 2008年 2009年 2010年予
新日本 317名 770名 665名 226名 150名
ト-マツ 502名 870名 480名 383名 200名
あずさ 531名 554名 640名 355名 250名
あらた 161名 248名 275名 110名 100名
1,511名 2,442名 2,060名 1,074名 700名

2006年のみすずの採用は223人であり、みすずを含めると1,734名
(Source:日本経済新聞 2006/12/07朝刊、2007/12/01朝刊、2008/12/01朝刊、2009/12/05朝刊、2010/11/16朝刊)

そもそも、市場の横ばいであるにもかかわらず、2007年及び2008年に採用を増やしたのには、監査法人にとって経営上の合理的な理由はない。


(Source:第6回 日本公認会計士協会「公認会計士試験制度改革に向けた具体的提言」, p.3)

では、なぜ採用を増やしたのか。

それは、公認会計士を名乗るためには、試験の合格するだけではなく、補助業務等の実務経験が必要であることに起因する。一般企業における実務従事でも、条件を満たすことができるケースもあるが、主たる実務経験はやはり監査証明の補助業務となるのである。

そのような現実を加味した結果、監査業界では、実務経験を得る場として、一種の社会的責任として採用を増やしたものといえる。

しかし、急増した合格者の受け入れは、監査業界としてのキャパを超えた。加えて、2008年のリーマン・ショック。これらは、現実問題として監査法人の経営を圧迫し、営業赤字、そしてリストラの実施へと進む。当然、リストラの対象には、実務経験を満たした大量合格世代も含まれる。

 

そして、今後の採用はどのようになっていくか。

当然、市場が横ばいであるのだから、ここ数年の大量採用に対応する人員の整理はある程度必要となるだろう。しかし、監査法人での現実的な離職率は好景気時で5~6%で、不景気時では2%程度になっており、強制的な人員整理が今後も行われるだろう。

その一方で、構成員に対する網羅的な教育・経験をさせるためには、ピラミッド構造を維持する必要があり、定期採用としては一定数を継続的に採用する必要がある。

つまり、一定程度の採用と一定程度の離職がうまく回転する必要があり、そのような点を総合的に考えると、今後も監査法人の採用数は1000人前後で推移すると想定される。

 

(参考)公認会計士制度に関する懇談会 関連議事録

第1回

○増田委員

そういった中で、現状、そういう実務経験を経る場としまして、会計業界といいますか監査業界といいますか、そちらのほうのキャパシティーというのは限界があるわけです。それともう一つは、企業内のほうの受け入れ態勢、企業内においてそういう実務経験を経る時間、場所といいますか、いわゆる実務従事と先ほどご説明ありましたけれども、その実務従事の場というのが限られているという状況の中で、今日、資料の9に金融庁側の考え方として2,000名程度というのが出ていますけれども、現状ではそれはちょっと多いんじゃないかなと思います。これは私の私見ですけれども、最近の受験生の増加傾向だとか、それから合格者の状況、それから実際のそういう実務経験を経る場としての会計業界、会計士業界といいますか、そこと企業の側の受け入れ態勢といいますか、そういったものを考えますと、やはり1,500人から1,800人ぐらいの間だろうというふうに思っています。

この最近の4年間の新しい試験制度においての平均の合格者と、その採用状況を見ますと、今のところ、非常に大きな需要のあった内部統制制度が昨年導入されましたので、それなりに昨年はたくさんの方が会計事務所にも入ったんですけれども、多分この後、その反動が来まして、二、三年はそこまでいかないだろうということを考えますと、マックスでも1,800人ぐらいかなというふうに思っています。私自身の意見ですので、これは会計士協会で調査したわけではありません。企業側の受け入れ態勢について、いろいろご努力頂いていますので、そちらのほうで1,000人とか採用できるというような話があれば別ですけれども、現状を見ますと、平均してみても100人いっていないというような状況ですので、倍増しても200人ということなんで、実業界側、産業界側の採用は少ない状況です。そういう状況を考えますと、2,000人では非常にきついなという感じはします。

第4回

○佐藤参考人(有限責任監査法人トーマツ包括代表)

③のところは、大手監査法人で一回実務経験をして、公認会計士の資格を取ってから一般企業に行くという道があるわけですが、これは非常に望ましい形ではありますが、現行ではなかなか難しい。先ほどアメリカの例が出ましたけれども、私どものアメリカのメンバーファームでは大手監査法人の離職率、回転率は15%から20%です。ところが、日本で我々の法人で回転、離職率というのは、景気がいいときでも5%ないし6%で、不景気になると当然に辞めませんから、2%程度になると思うんです。アメリカ型の人事の流動化は、日本の国の仕組みとしてそうなっていないというところがやはり大きい。

 第6回

○山崎参考人(日本公認会計士協会副会長)

参考ですが、また同じく3ページ目に右側に参考2としてグラフを出しました。これは、いずれ大手監査法人あるいは監査業界から一般企業等に出ていく人の圧力が増えるだろうということを予想させる実態を表したものであります。薄い四角、上から2つ目のグラフが、これはいわゆるクライアントを表しております。これは全然増加していません。ところが、その次の三角のグラフ、これは公認会計士の数であります。公認会計士も含めた監査業界の在籍者数というのは一番上ですが、それに比して最後までというか、かなりの程度まで監査業界に残れる人、これをいわゆるパートナー、代表社員・社員ということで想定いたしますと、この数は増えていない。ですから、三角と見るのか、一番上の黒い四角と見るのかとありますが、その差はいずれ市場に出ていかざるを得ないような層ではないかと想定されます。

第8回

○土本参事官 意気込みの前に、事務局からのコメントでございます。

資料の1の2ページをお開けください。上から2つ目のポツの「なお」というところで、先ほどの合格者数についての事務局なりの現時点での整理でございます。就職浪人はもともと合格者が増え過ぎたからということで、合格者数を減らせばいいじゃないかというご批判をよく頂きます。それで、我々の認識としましては、求人数、特に合格者がみんな望んでいる監査業界の求人数が1年程度で半減をするという非常に大きく変動しているということで、ある意味数年先の求人ニーズ、このあたりもこの懇談会でも4大法人の理事長の方々に来て頂き、また個別にいろいろインタビューをさせて頂きましたけれども、なかなか数年先の求人ニーズを予測することはどこの法人の方も難しいと言っておられて、かつなかなか経済の関数ですので変動するということでございます。他方で、学生は数年前から準備を始めないといけないというあたりが一つ難しいのかなということでございます。

ある意味中長期的に専門家を育成する必要がございます。かつ国家資格であるということを考えますと、合格者数あるいは合格基準が年によって変わると、ある程度変わるというのはあるのかもしれないんですけれども、需給に合わせて変わっていくというのは難しいんじゃないかなということで、逆にまた求人数を大幅に下回るような水準まで下げていくという話になりますと、非常にまた難しい試験になって、更に高齢化が進んでいくということもございますので、確かにこの問題は合格者数から始まっておりますので、合格者数をどうするかというのは非常に大切な点であると思いますが、他方で合格者数だけで現在の問題が解決するとは思えないという前提でございます。

○増田委員 今、土本参事官からお話ございましたけれども、我々は合格者を激減させろと言っているんじゃなくて、通常考えられるぐらいに増えていくのはいいだろうと思っているわけであって、受験生が倍増していないのに合格者は2倍半になったということを申し上げているわけです。

それとここに書いてある監査業界の求人数は、1年で半減したというふうに書かれていますけれども、多数の合格者が出る中で、それなりにできるだけ多く採用して頂いたわけであって、決して喜んで採っているわけじゃなくて、その証拠に翌年は非常に採用者が減っちゃうというわけですよね。そういったこともあって、この辺はちょっと誤解があるんじゃないかなと思うんですけれども、山崎さんちょっと補足を。

○山崎参考人(日本公認会計士協会副会長) データがこの資料の4にあるのかどうか分からないのですが、もしないとすれば次のときには入れて頂きたいんですが、監査法人は、一時15年の試験制度の改正の後、合格者が増えてきたときに、いろいろなことも考えてかなりオーバーペースで採っているわけです。その後、もうそれ以上採れないという状況に至ったのに今度は3,500人という話になってきて、これはとても採れないという話になっておりますので、ただ単に監査法人が経営的に増やしている、減らしていることでは全くありません。それは誤解のないようにお願いいたします。

いわゆる経済界の実情を無視したような形で、何年に何人にするというふうなことの目標を立てて、その中で合格者を増やしていくという考え方がおかしかったのであって、経済の実情、監査業界の実情あるいは会計士に対する一般社会のニーズというものを考えて徐々に増やしていくというふうな常識的な対応をしておけば、ここでこういう議論をする必要は全くなかったのだと私は個人的には思っております。

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